はじめまして、B社のAと言います。
商談相手は差し出された名刺を受け取ってから、目の前のPCに何やら打ち込んで確認を取ると、Aを羨望の眼差しでながめながら、Aの話に熱心に耳をかたむけた。
 どうやら今回の商談もうまく行きそうだ。数々のプロジェクトを成功させたT大卒の俺の話なら、誰だっておろそかにはできないよな。
Aはニヤリと笑ってから、今度はトラブルを起こしてもめている暴力団系のC社に向かった。
 失礼しました。Aさんほどのお方がB社にいらしたとも存じませんで。
 まあ、いいからいいから。
丁重に対応するC社の社員を、おうへいな態度であしらいながらAは考えていた。
 数々の修羅場をくぐり抜けて来た極道で、政界やマフィアにも顔があるなんて、ちょっと調子にのり過ぎたかな。
不正アクセスと個人情報の改ざんが世間に知れたら、どんな人間にも一目置かれる生きざまを持つ今の俺は、みんなに馬鹿にされる情けない元の俺に逆戻りだ。
 今度、住基ネットにつながった俺の個人情報をいじる時は程ほどにすることにしよう。
Aはそう言いながら、標的以外の人物が極道になっている今の自分にアクセスできないように、住民番号の照会を一時的にブロックしておく作業を忘れはしなかった。

vol.229
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