Raptor Migration Symposium 2002
ハチクマシンポジウム イン 佐世保
― 第3回タカの渡り全国集会 2002 ―
- 日 時 2002年9月7日・8日
- 主 催 佐世保渡り鳥研究会
共 催 (財)WBSJ長崎県支部 / タカの渡り全国ネットワーク / させぼ塾
- 会 場 長崎県佐世保市烏帽子町 県立佐世保青少年の天地 本館大研修室
- 主催者あいさつ
- 佐世保渡り鳥研究会 馬田勝義
タカの渡り全国集会も今年で3回目。今回はハチクマに絞った。佐世保渡り鳥研究会は「させぼ塾」から運営資金を半額いただき開催に至った。2日間よろしくお願いいたします。
- WBSJ長崎県支部長 鴨川 誠
ようこそ佐世保へお越しくださいました。特に猛禽類の好きな方の集まりだと思います。猛禽類の雄大な飛び方にひかれた。話が長くならないように歓迎の挨拶に記載しました。アジア地域の渡り、特に韓国の渡り、台湾西部の膨湖群島(無人島)の渡り、資料裏面に台北県観音山の渡りの例を示してあります。これから川田さんからご指導いただき、研究者方々の発表をいただきます。これから2日間よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

- 講演「ハチクマの識別」 バードコーディネーター 川田 隆
ハチクマ属は世界に3種知られており、ヨーロッパハチクマ、ヨコジマハチクマ、ハチクマで、前者2種には亜種はない。ハチクマ(Pernis
ptilorhyncus)は6亜種に分けられており、日本のハチクマ(P,p,orintalis)は他の亜種と比べ体が僅かに大きく、翼が長いとされる。
<他種との識別>
ハチクマの体色は多様で、特に体下面の色彩と模様は個々の個体で異なっていると言っても過言ではない。さらに雄、雌、幼鳥でも大きく異なるために、他のタカ類との識別は難しい。
最近ミサゴはダム湖にかなり出現してる。また、クマタカは標高300m付近にも生息しているためミサゴ、クマタカとの生息圏はハチクマと重なっている。
【ミサゴとハチクマ淡色型】 ミサゴは翼が細長く、次列風切羽の膨らみはなく直線的で外側初列風切羽の突出は5枚である。ハチクマは次列風切羽に膨らみがあり外側初列風切羽の突出しは6枚である。静止時には翼の長いミサゴは尾先を越えるが、ハチクマは尾先を越えることは無い。
【クマタカとハチクマ淡色型】 クマタカの頭部は太く、次列風切羽の膨らみは大きく翼の幅が広く見え、外側初列風切羽の突出は7枚である。尾羽下面は暗褐色の太い縞がクマタカ成鳥では3〜4本見え、ハチクマの雄では2本しか見えない。クマタカ成鳥の頬は暗褐色で、虹彩色は黄色か橙赤色である。ハチクマの雄の頬は灰褐色で、虹彩色は暗褐色であるため、頭部を詳細に見れば識別できる。クマタカ幼鳥とハチクマ淡色型幼鳥は非常によく似ており、尾羽の縞や虹彩色、頬の色彩が同一に近い個体が見られ要注意だが、頭部と翼の形状が異なるので識別は可能である。
【トビとハチクマ中間型】 トビの尾羽は凹尾で少し開くと三味線のばち型になる。帆翔時は翼角から翼先が下がり、翼全体がへの字に見え、初列風切羽の付け根の白斑が目立つ。ハチクマの尾羽は円尾であり、帆翔時には翼は直線的に開きトビのような白斑はでない。
【ノスリとハチクマ中間型】 ノスリは翼も尾も短く、脇腹に褐色の大きな斑を持つ個体が多い。尾羽は明確な縞模様は無く、外側初列風切羽の突出は5枚である。ハチクマは翼と尾羽が長く、脇腹に大きな斑はない。尾羽の縞模様は雌雄、幼鳥共に明確である。
【イヌワシとハチクマ暗色型】 イヌワシの頭部は太く、尾羽が長い。さらに尾羽に明確な縞模様は無く、外側初列風切羽の突出しは7枚である。ハチクマは頭部が細く、尾羽の縞模様は明確である。
<雌雄の識別>
・雄の頬は灰色または灰褐色で、虹彩色は暗色である。雌の頬は淡褐色から暗褐色で、虹彩色は黄色である。ただし稀に雌の頬が灰色みを帯びている個体。虹彩色が雌雄共に赤色の個体も観察されている。
・雄の初列風切羽には黒褐色の太い縞模様が4〜5本、次列風切羽には3〜4本あり、先端部の縞模様は特に太い。雌の初列風切には細い縞模様が5〜7本、次列風切羽には4〜5本あるが、淡色部との濃度差が少ない。外側初列風切の突出部が縞状にならず全体に暗色に見える個体も観察される。
・雄の尾羽には黒褐色の太い縞模様が飛翔時に下から見ると2本見える。雌の尾羽には細い縞模様が飛翔時に下から見ると3〜5本見える。雌でも先端の縞模様が太い個体もまま見受けられるが、付け根の縞模様は細く数も多い。
<幼鳥の識別>
ハチクマの幼鳥は体色が雌雄成鳥と類似しており識別が難しいが、体色と飛翔型で識別は可能である。
・ハチクマ幼鳥は嘴付け根とろう膜が黄色く、虹彩色が暗褐色(稀に黄色)である。成鳥の嘴とろう膜はすべて灰黒色、雌の虹彩色は黄色である。
・ハチクマ幼鳥は飛翔時下面からみると、外側初列風切の突出部の淡色部が濃く、翼先が暗褐色につぶれて見える個体も見られる。次列風切羽も同様に、全体が暗色に見える個体が多い。成鳥雄の風切羽の縞模様は間隔が広い上に、淡色部が白色に近く、タカ斑が目立つ。成鳥雌の風切羽の縞模様は幼鳥に似るが、初列風切羽の縞模様は秋期は明確にタカ斑状にみえる。しかし換羽終了後の春期においては幼鳥同様に翼先が暗褐色につぶれて見える個体も見られる。
・ハチクマの幼鳥は帆翔時に初列風切羽と次列風切羽の境、P1とS1のところで羽先のラインが段差状に見える(成鳥に比べ、P1〜3が特に短い?)成鳥は帆翔時にP5から次列風切羽までの羽先のラインが滑らかな曲線に見える。
・ハチクマ幼鳥は風切羽に欠損は無く、あるとすれば何らかのトラブルであり、翼の片側だけに見られる。ハチクマ成鳥は繁殖期の滞在期間が短く、全身換羽が終了しないうちに渡りをはじめるため換羽途中であり、両翼のP3〜6辺りの羽が欠損しているか伸長中の個体が多い。
ハチクマの若鳥、亜成鳥については謎がおおく、現段階では明確な資料がない。ただ、春期各地で延べ千羽以上の個体を観察したが、P1とS1の所で羽先のラインに段差を認める幼鳥タイプの個体を確認できていない。最初の冬で風切羽すべての換羽を完了するとはサシバやノスリの例も考えられない。少なくとも孵化した翌年は、越冬地周辺に留まっていると考えるのが妥当である。亜成鳥については、尾羽に太い2本の縞模様がありながら、頬が灰食味が無い雄や、外側初列風切羽の淡色部が濃く羽先全体が暗色に見える雌などが亜成鳥と考えられなくも無いが、体色差の多いハチクマにおいては個体差の範囲とも考えられる。
<体色の識別>
ハチクマの体色は千差万別であり、体下面の地色は白色から黒色まで濃淡は無段階に存在する。この無段階にある濃淡を色別に表現するのは無理があるため、正規文書に記載する場合は淡色型、中間型、暗色型と表現するほうが適正だと考える。
体下面は体(胸及び腹部)、翼、尾羽に大別されるが、尾羽と風切羽は性差及び年齢さによる違いがあるため除外し、体と下雨覆の色彩を個体差として識別している。しかし、体と下雨覆の色彩は必ずしも一致しないため、体の色彩を優先的に記録している。なお濃くて太い縦斑や横斑がある個体であってもあくまでも地色を基準としている。
【淡色型】純白から象牙色の地色を有する個体を通称「白」と呼んでいる。このタイプの雄は非常に稀で、過去18年間各地で秋期観察した中(12692羽中識別した8004羽)で22羽。雌は104羽、幼鳥は475羽であった。全体の占める割合としては7.5%と一番少ないタイプであるが、伊良湖岬においては白の幼鳥が他の地域より多く10%を越えている。
【中間型】黄土色から桧皮色の地色をもつ個体を通称「茶」と呼んでいる。中には橙色に近い色彩の個体もいるがこれらも含む。雄、雌、幼鳥の別なく多く、一般的で全体の82.3%である。
【暗色型】焦茶色から黒色の地色を持つ個体を通称「黒」と呼んでいる。このタイプは「白」に比べて雄、雌、幼鳥が平均して見られ、体色の識別が出来た8004羽中雄166羽、雌178羽、幼鳥470羽であった。全体では10.2%である。
上記の数字には大多数が幼鳥群の伊良湖岬での記録を含むため、実際の割合とは異なる可能性がある。今後各地での記録を積み重ねて分析する必要がある。
<模様の識別>
ハチクマの体下面には地色の色彩に関係なく、無斑、縦斑、横斑のある個体が見られれる。体羽一枚一枚に暗色部が軸に沿ってあるか、羽先にあるかの違いで縦、横の斑状の模様になる。体羽に濃淡の差がない個体は無斑となる。なお、脇については横斑状になる傾向が強いので、体の中央部を重点に区別している。
・縦斑型は淡色型と中間型に見られ、暗色型には見られない。さらに幼鳥に多く、雄は縦斑状の模様になる個体がほとんど見られない。
・横斑型は幼鳥には少ない。暗色型では体の一部の地色が淡色になり、暗褐色の横斑点が現れる個体を横斑として記録している。
・無斑型は淡色型には少なく、幼鳥に多い傾向がある。
このように区別して記録を取った結果、ハチクマの体の模様は幼羽から成羽に換わる段階で変化すると推測される。体下面の模様は個体識別以外にあまり利用度がなく、判別基準も曖昧にならざるをえない実情にあるが、今後データの積み重ねにより何かが見えてくる物があるはずだと考える。
- 六ヶ岳のハチクマの渡り WBSJ筑豊支部 小河
- 六ヶ岳は標高339mの低山であるが、車道が無く徒歩で登り30分かかる。頂上は展望は360°視界が開けており、期間は9月半ばがよく、良い時には1日に約1700羽確認した。
- 調査地の特徴としてはハチクマが眼下を通ることが多く、背面をゆっくり観察できる場所でもある。
- ハチクマのレプリカを作って3kmはなれた別の調査点「剣岳」に設置し、ハチクマクラスの大きさのタカをどこまで識別できるか検証した結果、双眼鏡(12倍)では帆翔状態の場合のみ確認できたが種の識別は難しく、正面を向いた場合は見えなかった。また、裸眼では直線道路で検証した結果、帆翔すれば1km、正面の場合は500mが識別の限界であった。
- 秋は89年から記録があり、2000羽〜500羽。11月になってもハチクマの渡りを観察した。春の渡りは93年から記録があり、東から西へ一定方向に移動する秋の渡りとは異なり、春の渡りは方向性にバラツキがあった。
- 福岡市におけるタカの渡り(片江展望台の記録) WBSJ福岡支部 小野 仁
- 福岡県支部では研究部でタカの渡り調査を実施している。場所は油山の中腹EL260mにある片江展望台で実施しており、110°北から東を望むロケーション。97年から支部会員の協力で、1ヶ月の連続観察を実施している。ハチクマは97年2058羽、1999年には5000羽を越え、2001年は4460羽。
- 渡りのピークは気象条件により多少の変化はあるが、秋分の日を中心とした9月下旬である。
- 一日の渡りパターンは気象状況により変化するが、最近多く渡ってくる時間帯が以前の11h-15hから12:00-13:30と短縮傾向が見られ、東部の塒入りする山林の減少が懸念される。
- サシバ、ハイタカ属の渡りルートは、ハチクマが北東―南西であるのに対して、これにほぼ直交する北西―南東方向である。したがって、立石山などの記録と合わせて考えると、これらは朝鮮半島方面からの渡りであると考えられる。
- ハチクマの渡りルートを地質から分析すると、ハチクマは中国地方〜福江島にかけて花崗岩地帯を通過している傾向が見られたが意味は不明である。
- 大分北部の八面山の春の渡り WBSJ福岡・大分県支部 山本兆司
- 八面山は大分県北部の三光村〜馬渓町の町村境界に位置する標高659mの山で、四方八方から見ても同じ形に見えるため八面山と呼ばれる。メーサ地形(卓上溶岩台地)でハチクマにとっても周囲に高い山が無いためよく目立つ山だと思う。
- 今年の春の渡りの最大は521羽5/19日。1995年〜2002年では150〜400羽前後であったが、今年は900羽台となり八面山を中心に広く通過しているものと推測される。また、5月中旬がピーク。最大は521羽。
- <まとめ>
@ハチクマの渡りは4月上旬から6月上旬まで観察され、わたりの最盛期は5月中旬。
Aハチクマの春の渡りの総個体数は年により変化はあるが150羽〜400羽以上。2002年は900羽以上を確認。
B特定の時間帯にわたる傾向は見られなかった。
C八面山では春期はハチクマが西より飛来、東または南東へ飛去する。福岡市、九州北西部との渡り経路のつながりは断定できないが、八面山以西で東進するハチクマ、サシバの観察例もあることから春期、九州北部を西から東へ横断する経路の存在も考えられる。今後連係した調査が必要。
- ネットワークデータを個人的に分析してみており、今後八面山の調査の充実化、大分関崎の秋の渡り追跡、九州西部地域の春の渡り、秋の五島列島、下甑島以外の飛去地点の調査が課題である。
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仮説として
・九州地区は渡りの入り口、出口ともすべてが渡りルート地域ではないか?
・春の渡りでは大陸の気象条件のTPOにより、渡りのかなりの集団が特定の地域で観察されるのではないか?(大集団の臨時・ハプニングルート)
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Q&A
Q:ハチクマの春の渡りで3月の記録を再確認したい(川田)
A:ハチクマの春の渡りでは3月に北九州門司で確認されている。門司の中本さんが詳しく調査研究されている。(山本)
・マレーシアでは3月の初旬に移動を開始しているため十分可能性がある(ARRCN:新谷)
・今年は佐世保で2月に8羽だったと思うが観察された(長崎:鴨川)
- 唐津市鏡山の秋の渡り 佐賀野鳥の会 森本満樹
- 名勝虹ノ松原の背後にそびえる鏡山は標高284mの独立峰で台形をしており、浮嶽・十防山が眺望できる。中央には池がありタカが真上に来ないと解らないよう状態。
- 調査は日本野鳥の会佐賀県支部の深澤さんとほぼ二人で記録した。
- 1996年から2001年の記録から、通過羽数の多い2000.10.1(176羽)/2001.9.23(159羽)/2001.9.24(237羽)の3日を見ると2001.9.24は9h台に160羽と多く通過し12hには終了した特異日であった。
- 進入方向は東が48.3%と最も多く、次に東北東37.2%であった。
- 調査種はトビは留鳥として調査していない。チゴハヤブサがある程度多く通過する。アカハラダカが2000年に多く出た。
- 今後の課題として調査グループを組織化して継続調査をしたい。また、春の観察も進めていきたい。
- Q&A
有明海の奥は有明町と鹿島市の上を通りますね。これは熊本を通過した個体で、長崎のジンロクサンあたりを通過するようですがまだポイントをしぼれてない。(長崎県支部:鴨川)
- 五島列島福江島を渡るハチクマの記録 WBSJ愛媛県・長崎県支部 井上勝巳
- 1996年から連続して福江島で調査をした。広島研支部報1994年の記録、長崎県支部の1984年大瀬崎の記録がきっかけとなり調査を開始した。調査場所は大瀬崎の大瀬山で360度視界が開けている。
- ハチクマの渡去方向は270°〜240°300°方向もあり天候により様々である。
- 調査期間は9/下〜10/上旬。ピークは9/20過ぎから9/26日前後、10/上にも出る。9/中旬も可能性がある。
- 1996年の記録から6時から8時飛び立ち、それ以降は出ず、12-14hから少し出る程度で早朝に限られることが多い。
- 1999年台風が抜けた直後は1082羽確認したが飛び立つ個体は無し。翌日早朝一斉に飛び立った。
- 調査できる範囲は朝のうちは5km、日中は3kmほどと想定され、見れていない場所がかなりあり毎年の集計にバラツキがある。観察点を増やし最低2地点での調査が望まれる。
- 「そのう」がふくらんでいる個体も多い。
- アカハラダカは大瀬崎ではあまり観察できない。
- Q&A
ハチクマの渡りは台湾では出ていない。対馬・五島列島から東シナ海、大陸にいっている可能性がある。漁船の方からの情報があり、捕まえることができるほど疲れた個体が船に止まっている。丁度ハチクマの可能性がある五島列島の南西方向です。私は対馬の上県町と厳原町から出ている可能性もあると思う。(長崎県支部:鴨川)
- スポッティングスコープ ミニ知識 興和梶@小口
- 光学部品(対物レンズ:2-4枚、プリズム:ポロプリズム、接眼レンズ:3枚以上(現在は5枚以上)
- 色収差(色にじみ)は各色の屈折率(焦点距離)の違いにより発生。種類の違うガラスのレンズを組み合わせることにより色収差を防ぎ、色による焦点距離の差を無くしている。
- アクロマート:2色の色を消したもの アポクロマート:3色の色を消したもの
- フローライトクリスタル(FlouriteCrystal)は一番色の分散が少ない。ハロゲン化合物CaF2(別名:蛍石)の純粋な結晶でやわらかく加工しにくい。
- EDレンズは各社名称が異なるが、CaF2を数10%含むガラスの名称。加工が容易。
2日目 9/8
- アカハラダカの渡り観察会(烏帽子岳駐車場) 7:00-8:30 WBSJ長崎県支部 鴨川 誠
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アカハラダカ観察会の様子
説明:長崎県支部長 鴨川氏
烏帽子岳定点調査地にて
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- ハチクマの渡り(秋期)年齢構成他 信州ワシタカ類渡り調査研究G 久野公啓
- ハチクマの成鳥、幼鳥の割合は白樺峠、福江島では約70%が成鳥、伊良湖岬では94%が幼鳥であった。(海外北米大陸ではハイタカ属の渡りには海岸沿いに幼鳥が多く内陸に成鳥が多い)
- 年齢構成の年変化では、グラフでの初期は識別の誤差があったと思われ幼鳥の割合が多くなっている。
- 福江島では大きな集団は圧倒的に成鳥が多く、単独、小集団に幼鳥が目立った。大きな集団は調査地点から距離がある場合が多く、このため成鳥と幼鳥の割合は成鳥が少し少なくなっている可能性がありそうである。
- 福江島の調査機関を9月/10月で分けると後半は幼鳥の割合が多くなっていることが解った。
- Q&A
Q:他の調査地ではいかがでしょうか?(久野)
A:日の岬では伊良湖の個体なのですが、前半は成長の割合が少し多い程度で広範はほとんど幼鳥である。(沼野)
- 「そのう」のふくらみ調査を白樺峠にて実施した結果、ハチクマ、ツミ、ハイタカ、オオタカに多く認められ、サシバ、ノスリにはほとんど見られなかった。トビ、ミサゴも見られなかった。ふくらみだけでは、一概に餌、及び餌をとった時間等の影響があるため一概には言えないが、また、ハチクマの場合成鳥が少し多く、朝の時間帯は少ない傾向があったが、消化時間等。福江島では白樺峠よりもふくらんでいる個体が少ないようであった。
- Q&A
Q:どこかで渡り中のハチクマの採餌を目撃された方はいないでしょうか?(久野)
A:夕方地上へ降りた個体は多分採餌しているだろう(愛媛県支部:井上)
A:佐賀県伊万里市腰岳では溝に入って採餌していた。時間は午後。セミ/ムカデ/カエルだと思われる(長崎県支部:鴨川)
A:山口県大井の北側にある皆原塚付近の集落で30年以前、渡り途中のハチクマを捕獲して食べていたため取材したところ、胃の中からいろんな種類の蜂の成虫がでてきたとの話を聞いた。春の渡りでは木の芽が出てきたとも聞いた。昔から(明治時代頃)から捕っており、ニワトリより美味しいとか。その場所はハチクマのことを「彼岸鷹」と呼んでいた。(広島タカ渡り研:石井)
・ヨーロッパハチクマの春の渡りではベリー(イチゴ)を捕っているようだ(久野)
- 信州で繁殖調査のためハチクマに発信機を装着し2000年は1個体は繁殖地から白樺峠までは移動を確認できたが、白樺峠以南は行方不明。2001年には2個体のハチクマに装着、その1羽(SARU♂と命名)は白樺峠9/16→9/19福江島、9/20には海上へ飛び去ったデータが捕れた。天候は晴天が続き直線で1000km(300km程度/1日)は移動できたことになる。SARU♂は今年5/14に繁殖地へ戻っている。方角的には済州島方向へ渡去した。
- 久野流の記録のつけ方紹介-普通のノートをラインで分けて4色ボールペンで色分けして使用。
- Q&A
Q:福江島では成鳥と幼鳥の飛び立ちの時間の差はあるのか?甑島ででは幼鳥が多い傾向がある。早朝が少なく午後からの飛び立ちが多い。(福岡,大分県支部:山本)
A:データがまだとれていない。(久野)
Q:テレメ発信機の周波数・重さ等を教えてほしい。
A:26g程度でハチクマの体重が1kg+程度で3%程度のため問題ないと思われる。昨年の装着個体は無事繁殖地へ戻っており問題はないと思われる。(久野)
- 「そのう」のふくらみ、テレメの調査装備をスライドで紹介。
- 広島タカの渡り研究会の結成と活動 広島タカの渡り研究会 内海貴明
- サシバの渡りは少なく近年激減している。春にも少し見られる。
- 広島では大きな定点がまだ見つかっておらず、各所で調査を実施している。
- 広島西部ではハチクマの春のほうが羽数/1日の羽数は多い。60kmほどしか離れていない広島東部では少ないく、渡り状況が良くわからない現状。
- 日本野鳥の会広島研支部では1981年から始まり、1985年ころよりハチクマの渡りが見つかった。最初は中国山地を調査していたが、広島市上空を通過するタカ類を確認した。
- 当初は広島県東部と西部との情報交換が出来なかったため、1997年よりインターネットHP公開を開始しemail等を通じて情報交換が盛んにった。
- ハイタカ属の秋期東向きの渡りの解明、埋もれた個人データの発掘を保存を目的に広島タカの渡り研究会が2000年3月に40人ほどで発足した。
- 一斉調査として春と秋に3回。定点は上勝成山/休山(広島西部)、新山(広島東部)、山口県角島。
- 活動は懇親キャンプ、総会、調査報告書作成、観察会の開催 他
- 今後の活動として 春のハチクマルートの解明、ハイタカ属の渡りの解明(角島では春の渡りで朝鮮半島へ向かっての渡りが盛ん)
- タカの渡り全国ネットワークの取り組み HMNJ事務局 熊崎詔之
- 全国ネットワークの経緯は1996年よりniftyの電子会議室から始まり、急速なインターネットの普及とともにHPがオープン。2000年の第一回タカの渡り全国集会in信州2000にて全国ネットワークが提案されその年から試行運用が始った。その後第2回全国集会in我孫子2001にてネットワークが承認され正規運用を開始。
- 徳島鳴門山展望台(国設)存続アピールの実施、全国からのemail要望書により、存続が決定し主要調査地である鳴門山展望台を守ることが出来た。
- 2002年より春期も試行運用実施。20箇所の参加と京都にてGPS装着サシバの目視確認により研究者との連係体制をとった。
- ネットワーク参加地点数は2000年:24箇所、2001年:25箇所、2002年春:20箇所九州地区を除き増加傾向。(広島タカ研箇所は多地点のため、1箇所でカウント)
- Q&A
アマチュア研究者は学者の方々と内容の違いはあっても、同等の研究をしているんだ。また、フィールドの識別力では学者の方々よりも実力あると思う。自信を持って渡り調査を推進しようではありませんか!(川田)
- アジアにおけるタカ渡り調査の現状と課題 ARRCN事務局 新谷保徳
- ARRCN(Asian Raptor Research and Conservation Network) 猛禽類研究者を中心に、現在、参加国25カ国、125名のメンバーで構成されている。メーリングリストによって会員間の情報交換を実施している。
- 合同調査を行っており、タカの渡り調査、カザノワシ、コウモリダカの生態および分布調査、アジア固有種の分布調査、分布図の作成など。
- タカの渡り共同調査は、1999年に煙害影響調査としてスタートした。繁殖地、越冬地、渡りルートの基礎調査が目的。
- 福江島から西方向に渡るハチクマの秋の渡り経路は、中国大陸のデータは現状は全く無い状況なので、タイやマレーシアを通過する個体との関係が明らかではない。一方、台湾から100羽前後フィリピンへ渡っているが、その先は不明。
- ハチクマの秋期渡りルートではマレー半島を南下する個体、スマトラ、ジャワ、バリ島では確認されているが、他は情報がない。マレー半島では約1万羽ほどが通過しており、アカハラダカについても同様にマレー半島を約1万羽ほど通過し、インドネシア各地で越冬しているものと想定される。
- ハチクマの春の渡りは、スマトラからマラッカ海峡に3月上旬数千羽規模で沢山渡っているが、時期的に早く、どうも日本へ来ている個体ではないのではないかと想定しいるが今後の課題である。
- サシバの最終的な越冬地はフィリピン以南と考えられる。ボルネオなどの情報がない。マレー半島では少ないが通過しているが、日本との関係は不明。
- フィリピンでの研究者がいないのが現状。中国についても国土が広く研究者が少ないことがネックとなっている。
- 調査の継続には、資金確保が課題である。
- 識別力の向上が望まれ、日本からの経験豊かな人材の援助が必要と考えている。
- パネルディスカッションは時間都合上 中止
- その他連絡事項・要望
- 来年の10月に台湾にてARRCの大会がありますので、是非ご参加して発表していただきたいと思います。英語ですので、ポスター発表でもかまいませんのでよろしくお願いいたします。(ARRCN:新谷)
- 五島列島福江島大瀬崎の調査援助を含め、嵯峨ノ島での調査が必要があると思います。是非九州地区の方のご協力をお願いします。(広島タカ渡り研:石井)
- タカの渡り全国ネットワークの運営他 諸連絡 HMNJ事務局:熊崎詔之
- 2001年度会計報告 会計監査:信州ワシタカ類渡り調査研究G 長坂守芳
- 会計監査について:次回から翌年全国集会開催地で会計監査を担当することで承認を得た。
- ネットワークの代表は当面の間は決めないことで合意した。
- 会費は無しとし、全国集会の開催時の寄付金により運営。必要時はその都度対策を検討する。
- 2003年タカの渡り全国集会開催地について WBSJ徳島県支部 東條秀則
- 鳴門山展望台の存続についてはお世話になりました。この場をおかりしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
- 次回全国集会開催地は「徳島県鳴門市」2003年11月8日(土)〜9日(日)
宿泊は徳島ハイツ(徳島勤労総合福祉センター)予定
- 閉会のあいさつ WBSJ長崎県支部長 鴨川誠
- お疲れ様でした。貴重な調査研究発表を聞かせていただきました。学問の世界とアマチュアの世界が分かれては進まないと思います。アマチュアのデータは貴重です。今後とも続けていただいて、テレメトリー調査も是非推進していただますようよろしくお願いいたします。
- テレメトリー調査ワークショップ 信州ワシタカ類渡り調査研究G 木下通彦・久野公啓
- 烏帽子岳駐車場にて、実際の発信機、受信機、アンテナを使用しその使用方法の解説及び模擬探査を実演した。

八木アンテナを説明する 信州タカ渡り研:木下氏

当日は午後からアカハラダカの渡りが本格化しアカハラダカ4461羽のシーズン最初の大きな渡りに遭遇できました。100羽以上の群れがドンドン沸きあがる様子は壮観そのもの。スゴイスゴイと歓声の連発でした。
左の写真は熊崎がディジカメで3倍ズーム115mm相当(35mm判換算)で撮影したものです。肉眼に近い雰囲気です。