やぁごぶさた。元気そうやなぁ。
選挙戦の準備に追われる私のところへ、突然やって来たのは、なつかしいあの友人だった。ゆかいな人生を求めてお笑い芸人になっていた彼は、いまや若手の有名芸能人だった。
 いやぁ、君が応援してくれれば百人力だ。感謝するよ。
全身で喜びをあらわす私に、彼は楽しそうに告げた。
 政治の世界もおもろいかと思って、立候補することにしたよ。
彼は抜群の知名度をいかして、ぶっちぎりのトップ当選をはたし、私はその余波で落選に泣いた。
 国民に慕われる彼は、同僚の政治家達にとって利用価値が高く、政治のことを何も知らなかったので、官僚達にとっても都合がよかった。
やがて何度かの選挙をへて、かれの名が大臣候補として挙がるようになったころ、私はやっとの思いで当選をはたしたが、政治家として社会を変えるには、すでに歳を取り過ぎた初当選だった。

vol.129j
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